空き家対策としても注目されている空き家に係る譲渡所得の特別控除(3,000万円)の特例が令和5年度の税制改正により令和6年から制度が少し変わります。
現在は、売却前に家屋の取り壊し工事等をしなければなりませんが、令和6年からは売却後に買い手が取り壊し工事をしてもよくなり、使いやすくなります。
制度の概要
相続した空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例とは、亡くなった方の自宅をその相続人が相続して家屋やその敷地を売却したとき、次の要件を満たすことで売却益から3,000万円を差し引くことができる特例です。
①相続直前に亡くなった方の1人住まいであったこと(※1)
②相続開始から3年後の年末までに売却すること
③昭和56年5月31日までに建てられた家であること
④区分所有建物登記がされている建物(マンション等)ではないこと
⑤家屋を取り壊して更地にするか、耐震基準を満たすリフォーム等をして売却すること
⑥相続時から売却まで、事業用や居住用、貸付用に使っていないこと
⑦売却価額が合計で1億円以下であること
※1 要介護認定等を受けて老人ホーム等に入居して、その施設で亡くなった場合などは、所定の要件を満たしていれば適用を受けられます。
令和5年度税制改正での変更点
令和5年度税制改正での主な変更点は下記になります。
①特例の適用期限が4年延長されました。
現行制度における空き家の譲渡特例を適用できる期間は、令和5年12月31日までとされていましたが、適用期限が4年延長され、令和9年12月31日までとなります。
②売却の適用要件の緩和
令和5年末まで売却する場合には、売却する前に耐震基準を満たす耐震工事をするか、家屋を取壊さなければなりませんでした。令和5年度税制改正におり、令和6年以後は、売却後、翌年2月15日までに買い手が取り壊し工事等をしても適用を受けられることとなります。これにより売り手である相続人が売却前に工事費用を用意する必要がなくなり、利用しやすくなったと言えます。
③相続人が3人以上いる場合の特別控除額が減額となる。
令和5年末までに売却する場合は、相続や遺贈で取得した相続人の数にかかわらず1人当たり3,000万円ずつ売却益から差し引くことができましたが、令和6年以後については、取得した相続人が3人以上の場合は1人当たり2,000万円に引き下げられます。
留意点を踏まえて検討が必要です。
本特例は、併用して適用を受けられない制度がある点に注意が必要です。
相続税の取得費加算・・・併用不可
居住用財産を譲渡した場合の3,000万円特別控除・・・併用可
相続人等が住んだり貸したりしては適用を受けられないなど、留意すべき点があります。また、市町村から、相続後から売却時まで空き家であったことの確認を受け、確定申告までに証明書を発行してもらう必要があります。
その他にも留意する点がありますので、専門家にご相談の上活用の検討をされることをお勧めします。